【短編】くすんだリング。
くすんだリング
……欲しい。


「どうかしたか、楓」
「ううん」


8畳のワンルーム、シングルベッド。重なる胸からは汗の匂い。彼はシャワーは浴びない。だって石鹸の匂いでバレてしまうから。


「もっと欲しいのか?」
「欲しい」


私がそう答えると、課長の営む律動は早く、力強くなる。軋むベッド、こだまする自分の淫らな声。もっと欲しい、もっと……。


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