『スキ』だと言って!


腰に巻かれたカフェエプロンで濡れ手をそっと拭い、

飾り彫りの施された真っ白なドアに向い、深呼吸。



――――コンコン


「はい」


心地良いテールボイスが扉の先から漏れ聴こえ、


「お夕食の準備が整いました」

「ん、直ぐ行く」

「はい」



いつもと同じ。

何てこと無いありきたりな言葉。


別に不満がある訳じゃない。

むしろ、彼の傍に毎日居られるのだから、

これ以上嬉しい事は無いんだけど……。




だけど……――……。




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