紅き月

それなら学校の帰り道かと聞かれれば、それともまた少し違う。


学校の帰りかと聞かれたならば、ずいぶん時間のズレはあるものの、あながち間違いではない。



でも、帰り道ではない。

寄り道だ。



ここは、少年が毎日のように学校帰りに寄り道をする公園である。

大人ぶって洒落こいて言うならば、“行きつけの公園”という事になる。
“馴染みの公園”でも良いのだが。




その公園の1番奥に、少年はいた。


ブランコも滑り台も砂場も鉄棒も全部通り越した先にある小高い丘。

そこに、少年はいた。



生い茂る雑草達を布団代わりに、大の字に寝転んでいる。

添い寝はランドセル。



生まれつき色素が薄い質なのか、染めたわけでもないのにほんのり茶色い髪の毛。その柔らかい髪の毛が、風に吹かれてさらさらとなびいている。



色白な頬をくすぐるように吹き抜けていく風が心地よいのか、形の良い唇は緩やかな曲線を描き、長いまつ毛が重そうな目蓋はゆっくりと瞬きを繰り返している。



そして、目を開ける度にその瞳に映るもの。


それは、

これまた色素の薄そうな焦げ茶色の瞳を、


捕えて離さなかった。



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