紅き月
旅人

「……!?」



手から赤い光が零れだした。
きつく握り締めたはずの指の隙間から、赤い光が線となって闇へと逃げ出していく。

それと同時に、焼けるような激痛が体の中をびりびりと駆け抜けた。


「あっ……つ!」


手を開こうにも開けない。

必死に力を込めてみても、まるでビー玉に手がくっついてしまったかのように、ぎっちりと握り締めたまま、開く事ができない。


頭の命令を無視すると決めたらしいその右手が、ぶるぶると奮え出す。



「いっ……あ……ああぁぁぁぁぁぁ!」


少年の整った顔が、苦痛に歪む。

まだ声変わりのしていない、どこか幼さが残る声は、かつて発した事がない程の大音量で苦痛に叫ぶ。




そして声が途切れると同時に、風が止んだ。




想像を絶する痛みに耐えきれなくなった少年の体は、その意識を手放した。



ふわりと倒れた少年を受け止めながら、

草がしおしおと泣いている。



紅いビー玉は、

その手の中で、楽しそうに輝いている――。



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