めんどくさがりの南くん
どうやら南くんは、「めんどくさいから」というのが口癖、というか、めんどくさいかそうでないかというのが唯一にして最重要の行動理念であるらしい。




それを確信したのは、その日の午後だった。





橋本准教授あてで、段ボールいっぱいに書籍の詰まった荷物が助教室に届いた。




橋本先生の研究室は4階。



とりあえず運ぼうと持ち上げてはみたものの、重すぎて歩けそうにない。




学生の誰かに手伝ってもらおうと共同研究室を覗いてみると、たまたま皆出払っていて、南くんしかいなかった。





「ねぇ、南くん、今ちょっといい?」




「はい?」





南くんは緩慢な動作で振り返った。




あたしは段ボールを指さして、





「これ運ぶの、手伝ってくれない?」





とにこやかな笑顔とともに言った。






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