王様の告白
 一瞬、俺は社長が何を言っているのか判らなかった。

 なにしろ、財閥系企業のトップ、西園寺拓也は、若きイケメン社長として、しょっちゅう取材を受ける有名人だ。

 下世話な週刊誌が、企業、社長部門の抱かれたい男№1にウチの社長を祭り上げるのは、その顔が整っているからってばかりじゃない。

 高い背と見事に引きしまった身体が、モデル顔負けだったからだし。

 世界一お堅い経済新聞が、彼を散々記事にするのは、世界の経済を動かす商才と敏腕さを称賛しているからだ。

 個人資産も莫大だし、返済に困る借金もない。

 あえて欠点をあげれば、一度結婚して娘が一人いるのだが。

 妻が三年前に亡くなって以来、全く女っ気はなく、フリーだし。

 仕事柄、海外出張が多くて、あまり家に帰ることは無く。

 四六時中、愛娘にべったり……という生活は、本人が送りたくても送れない。

 そんな経済界の王、とも噂される西園寺拓也に求められて、落ちない女は、まずいないだろう。
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