真夜中のパレード

羽化



「でも七瀬さん、少しずつ元気になってきて、
良かったよね」


上条は社内の食堂で昼を食べようとしていた。

七瀬、という名前が聞こえ、
そちらを見ると同じ部署のかしましい女子三人組と、

男性社員の堀田と渡部の二人が
一つのテーブルに集まって食事を食べていた。


持っていた黄色いトレーを
彼らの集まっている隣のテーブルに置き、
上条はそちらに顔を寄せる。


「七瀬がどうしたって?」




「あ、上条さん」


上条を見つけた彼らは口々に挨拶をする。


「お疲れ様でーす」

「あぁ、お疲れ」


野田と桝田、それに井上の騒がしい三人が口を開く。


「七瀬さん、すっごくへこんでるかと思ったけど、
わりと元気そうでよかったなーって」


「あんなに若いのにお母さん亡くなっちゃうなんて、
かわいそうだよね」


「うん、親戚とか近くにいるのかな?」



上条はその言葉に意外に思い、
口を開いた。


「へぇ、意外だな。
あんまり関わりがなさそうに見えたが」

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