草食彼氏が狼になった日


冷たいコンクリートが背中を冷やす。
一筋の汗が壁際に追い込まれた背中をツーンと流れる。

彼の口角が左に少し上がって、まるで舐めまわすような目線に
耐えきれず視線を逸らした。

逸らした先には彼の右手の拳から覗く、白く長い指先に眩暈がした。
何度も想像したその指で、あたしの体に触れる瞬間を・・・

軽く深呼吸をしても、息がうまく吸えない。
彼とあたしを取巻く張りつめた空気が一層、呼吸の行き場を失う。

誰がどう見てもテンパっているあたしを見て
クスッと笑い、もて余していた彼の左手があたしの腰に触れた。
その部分が熱く変化する。

「今、俺の指を見てエロいこと想像したでしょ?」
「俺、莉子さんのこと分かってなかったのかも・・・ちゃんと言ってよ?
俺が欲しいって」

いつもと違って積極的な彼にただ翻弄されるがまま、
そんなあたしに満足そうな顔をした彼の息遣いを近くに感じた。


唇が重なる距離まであと数センチ―――





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