カタン、とキーボードを叩く音が雑多なざわめきに混じり、やがて重なって消えていく。


ずっと同じ姿勢でいるのは辛い。力を抜いて肩を揉み解せば、作業机にコトンとホットココアのマグカップが置かれた。

「あ、ありがとう」

「いいえ~今日も残業、お疲れさまでした。あ、営業課の人も帰ってきたみたいですね!」


後輩が何気なく出した言葉に、自分の顔が強張るのを感じた。

私たち営業事務は営業課のサポートをしているから、同じフロアの区切られたパーティションで仕事をしている。クリスマスや年末商戦が主力商品の売り時の会社だから、11月の今は繁忙期に入る。


だから、顔を合わせる機会は普通より多いのに……。


「きゃあ! 三宮(さんのみや)さんがこっち通りますよ、先輩!」


はしゃぐ後輩を宥めながら、こちらへ向かって歩いてくる人にチラリと向けるけど……。


その人は、こちらを見もせずにスッと通り過ぎていった。 まるで、私が居たことすらなかったかのように……。


それが、三宮 仁史(さんのみや ひとし)。姉が亡くなった10年前から、ろくに話せなくなった幼なじみだった。


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