「えっと……すみません。何の話でしょうか」


 一体何を言っているんだろう、この人は。もしかして、人違いでもしているのでは? それとも、さっき手島さんに言われていたように、これもナンパの手口なのだろうか。……いや、でも、私みたいな女にナンパなんてするはずがないか。


「嘘でしょ? いやあ、こんな子いるんだ本当に」

「え?」


 何故だか、突然笑い始めた平岡さんに私は目を丸くした。

 ははは、とひとり笑い続ける平岡さんのことを私はただ不審な目で見ているだけ。

 だが、平岡さんがズボンのポケットから取り出したものを見た瞬間、私はやっと今までの言葉の意味を理解することができた。


「ほら、これ」


 そう言いながら平岡さんが見せてきたのは、白地に淡い桃色の花が刺繍されているハンカチ。


「え……それ、私の……」

「そう。そういうこと」


 驚きを隠せず口を開いたままの私に、平岡さんは「まさか覚えてないとはね」と笑って付け足した。


平岡さんの右手にある、そのハンカチは私のハンカチで。

その、私のハンカチを何故平岡さんが持っているのかというと……


それは

遡ること、約2時間前の話───。


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