口の悪い、彼は。
2.ツンツンリーマンの笑顔。

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***


今日は真野部長とオフィスに二人きりだ。

本社営業部は一課から三課まであり、このオフィスには一課に所属している18人のメンバーが集っている。

毎日みんながみんな営業に出掛けるわけではなく、週に一度以上は営業事務の私にはできないような内勤業務や電話営業のために、営業の人もオフィスに残ることがある。

春の間は新人さんたちが勉強をしつつ内勤業務や電話営業をしているんだけど、そろそろ外に出してもいいだろう、と半月ほど前から新人さんたちは営業さんに同行するようになっていた。

今日はそんな内勤業務を始め、重要取引先とのアポ取り等の作業、部長にしかできない業務をするために、部長は営業に向かわずオフィスに残っているのだ。

真野部長は“部長”という管理職に就きながらも、営業成績トップの座を他の人に何年も譲っていない。

部長独自の業務で営業に出る時間が他の人よりも少ないにも関わらず、だ。

それが部長のすごいところなんだと思う。

ここではツンツンなのに、どんな会話術と表情で取引先やユーザーを落とすんだろうと考えてしまう。

……もしかして、笑顔なんて見せちゃったり、おだてちゃったりしてるのかな?

すっっっごい、見てみたい……!

だって、部長の笑顔なんて見たことないんだもん!

きっと……いや、絶対にカッコいいはずだ。

もしかしたら可愛い系かもしれないな。

そうは思っても、私はしがない営業事務だし、たまにオフィスに取引先の人が来ることもあるけど、話し合いは会議室で行われるから、私はそれを知ることも見ることもできない。

……いつか、部長の笑顔が見たいなぁ。

それを叶えるにはどうしたらいいんだろう……。

……とと。

いけない。仕事しよう。

 
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