口の悪い、彼は。
じっと部長のことを見つめてしまっていると、部長とばちっと目が合った。
部長は眉間に深い皺を寄せる。
「!」
「おい、何をしてる?用が済んだなら、さっさと仕事に戻れ。まだ仕事あるんだろうが」
「あっ、はい」
「返事は短くていいって何度言えばわかるんだ?お前はほんと学ばねぇな。ったく」
「……すみません。失礼しました」
……まぁ、穏やかな雰囲気になるとは言っても、こんな風に飛んでくる言葉はやっぱり尖ったものではあるけどね。
眉間にいつか取れなくなるんじゃないかと思ってしまうくらいの深い皺を作った部長に、私はぺこっと頭を下げ、部長の前では「あっ」とか余計な言葉は禁句だったなぁ、と反省しながらデスクに戻る。
その途中、『うまくいった?』と少し不安な表情を浮かべている同僚たちに向かって『もう大丈夫ですよ』と笑顔を向けると、同僚たちはほっとした表情を浮かべ、口パクで『ありがとう』と言ってくる。
部長のあの表情が見れた上に感謝されるなんて役得だなぁ、なんて私はほくほくとした気分だった。
この後、部長の“独り言”がオフィス内を飛び交うことはなかった。