口の悪い、彼は。

3

 



トイレ帰り、私は屋上に行き、そこにあるベンチに腰を掛けて外の風に当たって頭を冷やしていた。

……というのはちょっと言い訳で、何となく部長のいるオフィスに戻りづらいと思ってしまったのだ。

今の間に部長が先に帰ってくれていたらいいなと思いながら、ぼんやりと目の前に広がる夜景を見つめる。

うちの会社の自社ビルがあるオフィス街の向こうには繁華街があり、ネオンがキラキラと輝く。

道路を走っている車のライトも綺麗だ。

仕事でフル回転していた思考が止まったことで、いろんな感情が私に襲い掛かってくる。

部長には女の人の存在がいること。

私は部長への気持ちを断ち切らないといけないこと。

下手したら私の気持ちがみんなにバレてしまっているかもしれないこと……本人の部長にもバレてしまっているかもしれないこと。

あぁ~もう、恥ずかしいし、ショックだし、来週から会社に来れない……!、と私は頭を抱えてしまう。

もしかしたら、喜多村さんも営業のみんなも、私の気持ちを知っていて早く諦めさせようと、部長の話をわざわざしてくれたのかもしれない。

私が告白なんかしてしまって傷付かないようにって。

そのみんなの優しさに気付くと、涙が出そうになってしまって、私は両手で顔を覆い俯いた。


「は~……」


身の程知らず、とは私のことなんだなぁ。


「高橋?何してるんだ、お前は」

「!!ぶ、部長っ!?な、何でここにっ!?」


背後から聞こえてきた低い声にはっと顔を上げて振り向くと、そこには呆れた表情の部長が立っていた。

屋上には電灯はあるものの室内よりは暗く、その表情も少し見えづらいけど、部長が呆れていることはその声色も手伝ってしっかりとわかる。

 
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