狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録

激突!!センスイVSシュウⅠ



「…あ?それって脅しのつもりか?」


負けん気の強いシュウは自分よりかなり視線の高いセンスイに物怖じすること睨みをきかせている。


「いいえ?脅しなどではありません。正論を言ったまでです」


後方のシュウへと向き直ったセンスイは…右手でアオイの真っ白な手を優しくとったまま、左手で易々とシュウの胸倉(むなぐら)を掴み、彼ごと持ち上げようと力を込めた。


「てっめぇ…っ!!」


女性と見紛うほどの美貌を兼ね備えた彼の細腕のどこにこんな力があるのかと思わせるほどの凄まじい力だ。


徐々に体が浮き始めるシュウ。

かなり力が込められているはずのセンスイの腕だが、当の本人は顔色ひとつ変えることなく平然としている。


「センスイ先生…?」


彼の広い背に視界を遮られ、何が起きているかわかっていないらしいアオイが不安の声をもらした。


「くっそ…っ!!」


(何だこいつ…イカれてやがるっ!!)


「シュウ?」


「ねぇ、センスイ先生…何をしているの?」


苦しそうなクラスメイトの声に、アオイの不安はどんどん大きくなっていく。


「……」


そしてまるでアオイの言葉さえ耳に入っていないセンスイの手はさらに力が加わり、少年の胸を強く締め上げていった。


「先生っ!!」


とっさに嫌な予感を肌で感じ取ったアオイは、センスイの注意を引こうと大きな声を上げる。


「…彼女のまわりをあまりうろつかないで下さい。あなたが気安く触れていいような立場にあるお方ではない」


おそらくアオイに聞こえないよう配慮したであろうセンスイの低い声。スッと細められた彼の目には微塵の冗談も含まれてはいないのは明らかだった。


「ど…いう意味だよ…っっ…」


苦しみに呻くような声を発したシュウ。するとその胸元を締め付けていたセンスイの手が緩められ、シュウは激しく尻もちをついてしまった。


そして頭上から浴びせられたセンスイの一言に恐怖を感じたシュウの背は凍りついたように感覚を失っていく…



「あなたには全く関係のないことです」



先程の笑顔とはまるで別人に睨まれているかのような錯覚を覚え…殺気まで感じる始末だ。



「…こっちがてめぇの本性ってわけか」



「大人しくしてりゃ調子に乗りやがってっっ!!」



ブァと、いっきに膨れ上がったシュウのエネルギー。
廊下に面した窓ガラスがガタガタと震えあがり、今にも割れそうな勢いで軋み始める。



「えっ?…な、なにっ!?なんなのっ?!」



視界を遮られたままパニックを起こしているアオイの声が聞こえるが…シュウはもう後戻りできなかった。



「ヴァンパイアのハーフ…ですか」



ふっと不気味なほどに余裕な笑みを浮かべたのはセンスイただ一人だった―――
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