ショートストーリーが再びやってまいりました(*゚ェ゚)



…とある彼らの日常をこっそり覗いたお話でございます。




タイトル:アオイの適職?そのⅠ




出演:キュリオ(推定五百歳↑)
   アオイ(推定0歳)
   ダルド(推定二百歳↑)
   ブラスト(推定三十五歳↑?)
   ガーラント(推定百近く?)





夕食も終わり…キュリオは気心の知れた極近しい者たちとともにテーブルを囲んでいた。


銀髪の王は微笑みながら彼らの話に耳を傾け、口を付けていたカップをソーサーに戻すと…思い出したように言葉を発する。


「そういえばガーラント…アオイには魔導師の才能があるらしい。ダルドの魔導書がすでに反応を見せていてね」


嬉しそうに目元をほころばせて彼女に熱視線を向けるキュリオ。

この悠久では能力を持たぬ民の数が圧倒的に多く、もし力に恵まれた者だとしても…実力が伴わなければ他人を助けることなど到底無理な話だ。

まして魔導師ともなると数はさらに少ない。剣術や体術のように鍛えれば強くなるというものでもなく…ほとんどが先天的なものだからだ。

そして…

彼女にその稀な才能が秘められていると知ったキュリオは他の誰よりも喜び、彼女の魔導教育を自ら買って出るつもりなのである。


「ふぉっふぉっふぉっ!これはこれは…何とも喜ばしいことじゃっ!姫様とキュリオ様は本当に親子になる運命にあったようですな!」


ガーラントは心からの喜びを表現するように、笑い皺を深めて幼い姫を見つめている。


「あぁ、私とアオイは家族になる運命だったんだ」


あえて"家族"と言ったキュリオの言葉をこの時…誰も気にしていなかった。


すると…


「お待ちくださいキュリオ様っっ!!」


バンッ!!とテーブルに手をつき、身を乗り出して和やかなムードを破壊したのは剣術の教官をしているブラストだった。


「…ちょっとブラストうるさい…」


騒がしい事が嫌いなダルドは腕組みをしたまま彼を睨んでいる。


「し、失礼いたしました…っ!」


慌てて居住まいを正すブラスト。その斜め向かい側に座るキュリオは驚いたように彼を見つめて口を開いた。


「…どうかしたかい?ブラスト」


「どうしたんじゃお前さん…何か思う事でもあるのかの?」


ガーラントまでもが目を丸くし理由を説明するよう促してきた。


「はっ!…恐れながら申し上げます!!も、もしアオイ姫様が…」


「ふむ?」


ガーラントは見事な顎鬚(あごひげ)をなでながらブラストの言葉に耳を傾けている。


「…けっ!剣士になりたいとおっしゃったら…っ!!キュリオ様としてはいかがなさるおつもりですかぁああっ!!」


半ばやけくそのようなブラストの叫び声。呆気にとられているキュリオは二、三度瞬きをし…小さく笑った。


「そうだね…アオイがもし剣士になりたいと言うのなら…」


「……」


と、そこまで考えてキュリオは黙ってしまった。




―――…


『きゃぁあっ!!』


小さな彼女は大きな衝撃に耐えられず緑の大地へと激しくその身を打ち付けた。
神剣にいとも容易(たやす)く弾かれてしまったアオイの剣は、大きな弧を描き数メートル先にその刃を突き立ててしまった。

花びらを巻き上げ、身に纏うオーラを抑えながらもその圧倒的な威圧感を隠せずにいる銀髪の王がじわりじわりとにじり寄ってくる。

   
『立ちなさい…アオイ』


いつものような甘美な眼差しは微塵もなく、アオイを見下ろすキュリオの瞳は凍てつくように冷たいものだった。


『…はいっ!お父様!!』


よろよろと立ち上がり、己の剣を引き抜くアオイ。


『……』


傷だらけの彼女の体。重そうに剣を握るその華凜な指先は…本来、美しい花を愛でるためにあるものだ。
ところどころに血を滲ませ、時折…苦しそうに歪められる彼女の顔を見てしまえば…激しい罪悪感に心が締め付けら、呼吸もままならない。


『…行きますっ!!』


何度もめげずに立ち向かってくる彼女はとても美しい。
アオイのひたむきな純粋さが…いつしかキュリオの心を動かし、こうして彼は剣の稽古をつけるようになったのだ。


『はぁぁあっ!!』


勢いよく振り下ろされた彼女の剣。しかし…キュリオは流れるような優雅な身のこなしで軽々と交わしてしまう。


『えいっ!!』


神剣の力を借りずとも、キュリオは十分に強い。
五大国・第二位を誇る彼の実力の上には…千年王の精霊王しかいないのだ。


『アオイ、私が次…どんな行動に出るか風の流れを肌で感じてみなさい』


ふっと優しい笑みをたたえたキュリオの顔に…なびいた艶やかな銀髪が美しく煌めいた。


『風の流れを…?』


父の思いがけない一言に、踏みとどまったアオイ。


『…本当に可愛いね…私のアオイは…』


その一瞬の隙をついたキュリオは…あっという間に彼女の背後にまわり…


『…捕まえた』


後ろから華奢なアオイの体を覆うように抱きしめ…首元に顔を埋めるキュリオ。


彼女の汗さえもほのかな甘い香りを含み…キュリオはたまらずその白い首筋に唇を押し当てた。


『…お、お父様…っ…』


慌てふためいたアオイは思わず握りしめていた剣を落としてしまう。

そして…いつのまにかキュリオの手にも神剣は握られておらず、稽古が終わりであることを静かに告げているのだった―――


『…こんなところも怪我しているね…』


腹部にまわされたキュリオの手が、アオイの脇腹をなぞり…優しく撫で上げる。


『…っ!?』


背後からサラリと流れた銀の髪がアオイの耳元をくすぐり、感じたことのないゾクリとした感覚に小さな背が震えた。


『…っ!!お…とう…さ、まっ!!…や、やだっ!こんなところでっ!!』


きゅっと強く瞳を閉じた彼女の目尻にはうっすらと涙が浮かんでいるように見える。


『……』


初心(うぶ)なアオイの反応ひとつひとつがたまらなく愛しく…キュリオは慈しむようにそっと彼女の涙へと唇を這わせる。


『…寝室なら…いいのかい?』


『…ぁっ…』


キュリオの濡れた吐息と意味ありげな言葉に、全身が甘くしびれるように疼(うず)く。


『…はいっ…』


すると…頬を染めて小さく頷いたアオイは、恥ずかしさに肩を震わせながら…


『お願いっ…胸がとても苦しいの…っ!!お父様を想うと…わたし…っ…』


『…アオイ…』


抱きしめていた腕を緩め、彼女の体をこちらに向きなおさせる。が、気まずそうに逸らされてしまう視線。
しかし、態度とは裏腹に…あふれた熱い想いがアオイの頬を濡らし…それを見たキュリオは幸せそうに微笑んだ。


『…可愛い顔をよく見せて…』


『か、かわいくなんかっ…』


思わずアオイが顔を戻すと、キュリオの長い人差し指がそっと少女の唇に押し当てられた。


『…?』


驚きに瞬きを繰り返すアオイ。


『私の最愛の人を卑下することは…いくらアオイでも許せないな…』


『…っ!!』


あまりの衝撃に口をパクパクさせている彼女が本当に可愛い…。


『大好き…お父様…っ…』


泣き笑いのアオイをそっと抱きしめ、長年の片思いが…今…








―――キュリオの妄想の中で成就した。








「剣士…いいかもしれないな…」



頬を染め、にやける顔を懸命に抑えながら…キュリオはボソリと呟いた。



「…キュリオ様、今なんとっ!?(驚きにブルブル)」



「そ、それは誠でございますかっ!?(興奮にガタガタ)」



「…(…キュリオ、やましいことを考えている気が…する)…」








ダルド「そうだ…」





ダルド「…これ、まだ続くって逢生ありすが…言ってた」




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