狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録

アオイの瞳にうつるセンスイの姿

センスイの指がアオイの頬を撫で、そのまま離れていく。


「センスイ先生…」


寂しそうな彼の表情に…また言い知れぬ胸の痛みを感じ、アオイは離れていく彼の手を掴んだ。


「…っ…」


まさかそのような行動に出ると思わなかったのか、センスイは驚いている様子だった。

すると目頭を熱くさせたセンスイ。想いを言葉に乗せたセンスイの唇が開き、甘くその名を囁かれる。


「アオイさん…」


ギシリと音を立て、アオイの両脇に手をついたセンスイの顔がゆっくり近づいた―――


「先生…」


センスイの吐息を間近で感じ、意を決したアオイは瞳を閉じた…が、


―――カタカタッ


沸点に達したミルクが勢いよく気泡を掲げ、なべ底を揺らす音が響いた。


「…あ…」


パチリと目を開いたアオイとセンスイが近距離で見つめ合い、互いからは笑みがこぼれる。


「ふふっ、邪魔者は多ければ多いほど…仲は深まると言いますからね」


意味深な言葉を残し立ち上がったセンスイと、安堵の色を滲ませたアオイだが彼女の頬はほのかに色づいていた。

やがてここにいる二人のように加熱されたミルクを適温に冷ました彼はそれを手に戻ってきた。


「まだ少し熱いかもしれません。お気を付けて」


ニコリと微笑んだ彼からカップを受け取るアオイ。


「ありがとうございます」


そして、ふと飛び込んだ綺麗な指先に思わず見とれていると…


「…どうかいたしましたか?」


アオイの隣りに腰掛けながらセンスイが顔を覗き込んできた。


「あ…センスイ先生って本当に指の先まで綺麗な人だなって思って…」


「苦労していないように見えますか?」


「い、いえっ…ただ…」


そう言ったきり、顔を俯かせてしまったアオイ。



「素直に私を見て…思った事を口にしてくださって構いません。貴方のその美しい瞳に私がどう映っているか、教えて欲しいのです」



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