狂気の王と永遠の愛(接吻)を・センスイ編収録

アオイの思う"運命"

遠くを見つめるように目を細めたセンスイ。その瞳からは切なさや悲しみの色がはっきりと見て取れる。


「…同じ方と結ばれる運命…?」


あまりそのような事を考えたことのなかったアオイだったが、常日頃キュリオが口にしている事を…愛の深さを想い知らされる事になる。


"生まれ変わったアオイがどんな姿をしていても、私は君を見つける自信がある。必ず見つけ出してまたこの腕に抱きしめよう"


(お父様が言っていた事もきっとこういうことなんだ…)


心の中に灯ったあたたかな想いを抱きながら、アオイはカップの中で揺れるミルクを見つめ呟いた。


「そうだったら…とても素敵な事だと思います」


微笑みながらそう言葉を発したアオイだったが、センスイの反応は真逆のものだった。


「ならば…運命で結ばれていない者がいくら努力しようとも、彼女と結ばれる事は永遠にないということですか?」


悲痛な面持ちで見つめられ、半ば責められるように問いただされたアオイ。しかし、センスイの言葉でひっかかるものがある。


「…彼女?って…」


具体性の出てきたセンスイの話。女性の影があることはわかっていたアオイだったが、ここまでしてくれる彼の行動に勘違いしてはならない…と今さらに傷ついている自分がいて驚いた。


ドクン…と嫌な音を立てる心の臓。


(そっか…センスイ先生は誰かに片想いしてるって事なのかな…それなら…)


「…運命と言っても、それが異性の間で成り立つものの話だけではないと思います。親子だったり、友達だったり…ひとつ前の人生で大事な縁(えにし)があって繋がっていたとしても、また同じ人生を…なんてことを願っても誰にも操作することは出来ませんからね。強い想いが互いを寄せ付ける事はあったとしても…」


「次の人生はその時を生きるその人のものではないでしょうか?」


ニコリと笑い、さらに続けるアオイ。


「それに…運命って良い事も、悪い事も含めたものの事だと思いますし。どこかで断ち切る方法がなければ、その方は永遠に不幸になってしまいます」


センスイの心が救われるようにと口にした言葉だったが、"何か"に囚われている彼の心の負担が少しでも軽くなれば…とアオイは願わずにいられない。


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