アイス・ミント・ブルーな恋[短編集]

青いビール缶に、何を想う

あの人の好きな物を食べるたびに、あの人のことを思い出してしまう。

アスパラの肉巻き、薄い生地のピザ、青いラベルの缶ビールに、火で炙った獅子唐。

同棲をしていた時、近くのレンタルビデオ店で借りた映画を観ながら、あなたと一緒に晩酌をする時間が好きだった。

あなたがいなくなった今、それらを買い込んで、机に並べてみた。

こんがり焼けた肉を纏ったアスパラは鮮やかな緑で、ピザに乗ったきのこは賑やかで、獅子唐からはぴりっとした辛味が伝わってくる。

青いラベルの缶ビールは、いつか行った沖縄の海のようにクリアなブルーで、黄金色の液体とのコントラストが美しい。

コップに注がずに缶のまま、喉に流し込んでみる。

やっぱり辛口で苦くて、

飲めないよ、って、何度もあなたにビールを突き返したのを思い出して、

なんだかもう堪らなくなってしまって、

片っ端からおつまみを口に入れた。

「その量をひとりで食べるつもりなのか?」

隣に座りながら、同僚である保坂が呆れた様子で言い放った。

「別に保坂も食べていいよって言ったじゃん」

「お前がまだ飲みたいから付き合えって言うから付き合ってやってんのに、もっとおもてなしたらどーなの? 自分の好きなもんばっか買いやがって」

「別に好きじゃない、でも食べたかったの」

そうだ、私は別にこの料理が好きなわけじゃない。

でもなんだか、これを食い尽くせば、食い尽くしてしまえば、忘れられるような気がしたんだよ。
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