「トシ、この間タイムカード押すの忘れてただろ。今日は押したか?」

「ん~」

「川原は大丈夫か?」

「バッチシっす」

閉店作業をしていたスタッフ全員で各所の戸締りを確認して、スタッフルームに引き上げ、気が向いた順番でダラダラと私服になっていく。

こういう時の雰囲気は残っているメンバーによって大きく変わる。

仕事が終わり次第急いで帰る人が多いとさっと散るし、理由もなくダラダラとする時は大抵一人暮らしメンバーが多い時だ。

今日はどちらかといえば後者だった。

一応店の外に追い出されるが、夜でも少し肌寒い程度で、外にいることが苦痛でないから余計に寂しい部屋に帰るより、バイト仲間としゃべっているのが楽しくてすぐに帰らないのだ。

俺は実家だけれども、基本的に放任の親は、俺がどれだけ遅く帰ろうが、自己責任で片付けてくれるから、その時の雰囲気に合わせる。

男だから、心配の度合いも少ないのだろう。

「ほら、そん時の合コンの女子メンバー。見ろよ。どう思う?」

寂しがり筆頭の遊び人、関谷さんが携帯を取り出す。

写真を見せてもらうと、年齢のそう変わらない女子4人と男子4人が画面いっぱいに移っている。

好みはあれど、美人と言えそうな女性ばかり。

「可愛いじゃないっすか」

「俺この子が好みだなぁ。うわ、谷間!」

トシさんがロングヘアのいかにも品のよさそうなお嬢様風の女性を指差す。

前かがみになっているので、胸元が見えているのを目ざとく見つけて騒ぐのでムッツリと言われないだけいいのだろうか。

「ホント節操ないですね」

呆れ顔と声を作るのはダラダラ組常連かなっぺで、彼氏募集中を公言している彼女も一人暮らしで寂しいらしい。

ホールの女子はほとんど帰ってしまったが、男ばかりでもかなっぺは気にならないようだ。

彼女がいると、えげつない下ネタには走らない。

えげつなくない下ネタには走るが、その辺の線引きはかなっぺの引き具合。

関谷さんとトシさんはそういった配慮をしないので、かなっぺの顔色を見ながら適当にブレーキをかけるのは俺の仕事。

携帯が残っている全員にいきわたって、持ち主に戻る。

「そういうなって。博愛主義と言ってくれ。22歳女子大生合コン。でさ、この、真ん中の子が脱いだらすごかったわけよ」

「脱いだらって、関谷お前、当たり前にお持ち帰りかよ!」

「当然。けど、補正下着ってやつしててさ、脱がせるの超大変なの」

自慢げに話す関谷さんは、息をするように女性を口説くので、バイトの一部女性内では嫌う人もいるが、あまりにオープンに遊び歩いている姿は逆に気持ちがいい。

ある意味、武勇伝だ。

同じようになりたいかと言われたら完全に別だが、読者モデルにスカウトされるくらいの甘いマスクがあれば入れ食い状態なのかもしれない。

「でも喰ったんだろ!」

悔しそうに詰め寄るトシさんをなだめるように、関谷さんがその肩を抱く。

「そりゃ、おいしくいただきましたけど、どこからでも開けれますって書いてある袋が開かない感じ。あの苛立ちわかるだろ?」

トシさんと俺は同時に首を傾げてかなっぺに意見を求める視線を送る。