小悪魔的な彼と悲観的な彼女

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ガヤガヤと賑やかな店内は、いつ来ても繁盛している。

それなのに満席ですと追い返された事が無いのはきっと、大学生とか入社したばかりだとかのそういう若い子が来るような居酒屋よりも、少し高めのお値段設定だからだろうと思う。

だから店内はいつも大人の中の大人、世知辛い世の中に負けそうになりながらも必死で耐え抜いてきた、そんな素晴らしい精鋭的な方々が揃いに揃っていて、ここはそんな大人達の憩いの場。そこが私と琴乃が利用するいつもの居酒屋だった。

そして気づけばもう、すっかりここに馴染んでる29歳独身の私が居て…あれ?それって喜ぶべき事…なの?


「べき事べき事。だって始めからあんたここ落ち着くって言ってたじゃん。すっかりお気に入りだし」

「いやっ、落ち着くしお気に入りなのはもちろんだよ?だってここ若い子居ないし、普段は職場で若い子ばっかだし。あの元気にはちょっとついていけないっていうか…もう仕事の時だけでお腹一杯って感じだよ」

「だって?拓也。ついに振られてしまったね」

「大丈夫です、僕はもう若くないので」

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