「今日は・・・愚痴とか恥とかいっぱい聞いてもらって、ごちそうにまでなった上に送ってもらって。ホントにごめんね」
「おまえは何も悪くないんだから謝らなくていい。それより少しはスッキリしたか?」
「少しじゃなくて、いっぱいね。ありがとう」

有澤さんには、過去にも何度か晩ごはんを奢ってもらったことがある。
値段的には安いものばかりだったけど、それは、私がよくお金のことを気にしていることを知ってた上で、あえて私に気を使わせないようにしてたのかもしれない。
晩ごはん食べに誘ってくれるところも、安くで気軽に行けるところばかりだったし。
有澤さんって、実はとても気配り上手な人なんだ。

「仙崎さんと俺は、このことは誰にも言わない。信用していいぞ」
「もちろん!分かってるよ」
「水沢は酔っ払ってたが、ベラベラしゃべるヤツじゃない」
「うん。そうだね」

29歳の仙崎さんは、有澤さんと寮に同居していることになっているけど、本当は一昨年あたりから、仙崎さんの同期で、東京本社で社長室の成瀬さんと、ほぼ同棲しているそうだ。
それで有澤さんは「仙崎さんはいない」とか「いてもすぐ出る」と、自信満々に言ってたのか。

「月曜には中元課長に言うんだぞ」
「うん・・・」

気乗りしない返事をする私に、運転中の有澤さんは前を見ながら「全部言う必要はないから」と諭すように言った。
まるで「お父さんに言えと妹に言ってるお兄ちゃん」みたいな図式だ。

「念のためだ。上司に言っておくことで、事が大きくならないかもしれないだろ?」
「あ。なるほどねー。そういう考えもあるね」
「それに中元課長は頼れる人だ。仙崎さんも言ってたが、おまえひとりで何でもしょいこむな。おまえの悪い癖だ」
「う・・・ごめん」
「だから謝るなって。すず」
「はい?」
「お父さんが可哀想と思ったことは間違いじゃない。だからお父さんに金をあげた自分を責めるな」
「う・・・ん」

また私の目から涙がじわっと出てきたので、慌てて目をこすった。

「だがお父さんには二度と金をやるな。同情して金をあげ続ければ、おまえからなら金もらえると思って、いつまでもギャンブル癖は治らないだろう。だからこれはおまえのためだけじゃない。お父さんのためでもあるんだと自分に言い聞かせろ。“親だから”という情は、この際忘れるんだ」
「金の切れ目が縁の切れ目だね」
「そーそー」

と話しているうちに、アパートに着いた。

「有澤さん、どうもありがとう。気をつけてね」
「おう。すず」
「なぁに?」
「愚痴でも何でもいい。俺に話せ。いつでも聞いてやる」
「・・・うん。ありがとう」

「おやすみ」と挨拶をした私は、有澤さんの白いフェスティバが見えなくなるまで、そこに佇んでいた。

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