倦怠期です!

・・・なんか、夫の口調が硬い気がする。
それにこの人、青龍さんを見るというより、ガン飛ばしてるような・・・。
でも、何となくハラハラしているのは、私だけみたい。
青龍さんはニコニコしたまま、「ホムパするんですよ」と言った。

「ホムパ?」

眉間にしわを寄せ、語尾を上げて言った夫に、私は「ホームパーティーのこと」と説明した。

「それでね、防音効果のある壁でも、もしかしたらお騒がせするかもと思って。事前にごめんなさいねと言いに来たんですよぅ」
「あ。そうすか」

いつもどおりの軽めな口調に戻った夫を、私はチラッと見た。
青龍さんに対して睨みもきかせていないようで、密かにホッとする。

「よかったら来てくださいね。お二人ともウェルカムでーす。それじゃ」
「あぁ、はぃ」

それを証明するかのように、青龍さんが玄関ドアを開けると、ノリの良い音楽がかすかに聞こえてきた。
そしてドアが閉まったのと同時に、その場はシーンとなる。
それを合図に、夫と私は家の中へ入った。




「子どもたちはパーティーに行ってるけど。あなたは行く?」
「行かん。・・・おまえは行くのか」
「行かない。そういうの、あんまり好きじゃないし」と私が言うと、夫はサル顔をクシャっと微笑ませて、「そうだったな」と言った。

あぁ。この人って、笑うともっと若々しく見える。
だからというわけじゃないけど、夫の笑顔は好き・・・ううん、笑顔だけじゃなくて、全部。

急に恥ずかしくなった私は、夫に照れ顔を悟られないように俯きながら、キッチンへ歩きだした。

「青龍さんからいろいろとお料理いただいたの。それ食べ・・・」
「よう」と最後まで言い終わらないうちに、夫に腕を掴まれた。

「おまえさ、青龍さんと仲いいよな」
「そりゃ・・・お隣さんだし。マイカちゃんと遼太郎はつき合ってるし。青龍さんを嫌う理由もないし。仲良くご近所づき合いしようと、心がけてはいるけど」

え?もしかして・・・夫が不機嫌モードで帰ってきたのは、私が原因なの・・・?

「それだけか」
「うん、まあ・・・」
「じゃあ、なんで言うまで間があった」
「へっ!?」
「おまえが答えるまでに間があるときは、なんかある証拠や」
「そんなことないもん!」
「あ。今即ムキに言い返した。それにさっきの“へっ!?”。絶対なんかある!」

げ。この人、鋭いっ!
ていうか、やっぱり20年も一緒に暮らしていれば、些細なクセから、何事も見抜かれるわよね・・・。

背の高い夫は、イケメン顔を斜めに傾け、尊大に私を見おろすと、一言「言え」と言った。

チェックメイト。
ぐぐ。この勝負、夫の勝ち!

観念した私は、渋々マイノートパソコンを取りに行った。


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