***第5章***



「良かったわね、服、褒めてもらえて」

そう言った花はどことなく不機嫌そうで、きっと私のことが幸せいっぱいに見えたのだろう。

「褒めてもらったわけじゃないよ。
……気づいてはくれたみたいだけど」

花が思っているほど浮き立つ話ではない。私は低いトーンで水を差した。


ランチどき、人が多く空席はほとんど見当たらない。

話し声と食器の重なる音が響き合って騒がしいこの店内なら、少し恥ずかしい女子トークも隣の席まで届かないだろうから、安心して言いたいことが言える。

私と花は会社近くのイタリアンレストランで昼食を食べながら近況を報告し合っていた。

し合う、といっても話題の大半は私だ。


「でも、少し楽しくなってきたよ、服装に気を遣ってみるのも」


今日着ているグレーのニットと白いレースのスカートは、花と一緒に買い物へ行ったときに買ったものだ。

そろそろ着まわしのレパートリーが尽きてきた。

今度は自分一人で買い物に行ってみようかと思う。

今まで、必要に迫られて服を買いに行くことはあったが、ただなんとなく服を増やしたいだなんて贅沢なことは初めてだ。

……こうやって世の女性たちは被服代に尋常じゃない額を注ぎ込むんだなあと実感した。

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