薬指の約束は社内秘でー婚約者と甘い生活ー【番外編】
婚約者編
夢を見た――。

夢の中で私は、左手の薬指を滑らせていった感触に息を呑む。
トクンと鼓動が幸せな音を立てるのと同時に、柔らかい声が鼓膜まで響いた。

「俺は愛と付き合うなら、初めからそう気持ちしかないから。早すぎるなんて思わない。結婚しよう」

突然のプロポーズだった。
でも、迷いのないまっすぐな瞳に、「はい」と小さく答えると優しいキスが落ちてきた。



あの日から何度か見た夢は、いつもそこで途切れてしまうから。


「もう少し続きを見せてくれたっていいのに……」

思わず零れた愚痴にハッとする。
薄目を開くとさらりと頬にかかった髪を避けられ、軽くぶつかりあう額。

「続きって、どんな夢見てたんだよ?」

至近距離に迫る瞳が意地悪に細まり、ベッドのスプリングが微かに音を立てた。
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