彼に殺されたあたしの体
「あのですね藤木先生」


「なにも言わなくていい」


あたしを抱きしめる先生。


「でも、話が……」


「話ならもう終わったろ?」


「そうじゃなくて……」


「大丈夫。誰にも内緒に付き合おう」


先生はもう周囲が見えていない様子だった。


あたしの言葉も耳に入らないのか、あたしを抱きしめたままひたすら「愛している」を、繰り返す。


ロクに会話したことのない生徒を本当に愛しているのかどうか、怪しいものだ。


とにかくこの日、あたしは先生に正直に説明することができなかったのだった。
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