神風の如く

悲しい暗殺






八月も終わりに近づき、だんだんと涼しくなってきたこのごろ




現代とは違い、この時代で一番暑かったのは七月半ば




九月になってしまえば、もう秋である





そんな、季節が変わりゆくある日





華蓮はお梅と町に出てきていた




そう、この前の約束を果たしに来たのである





「華蓮ちゃん、土方はんと両想いになったんやて?」




あのあと、会話を盗み聞きしていた沖田によって華蓮と土方の関係は幹部にバレてしまっていた



恐らく、幹部の誰かから聞いたのだろう




「は、はい………そうなんです」




お梅は芹沢の愛妾であるから、現代でいう恋バナ、というものをするつもりなのだろうか……




「ホンマによかったなぁ……
うちもそれ聞いて、嬉しかったんよ」




お梅は自分のことのように喜んでくれた




「でも、あんまり実感なくて……
土方さんもいつもと変わらずに接して下さいますし………」




想いを伝えあってからも、華蓮は変わらず土方の小姓なのだ




それは華蓮にとって不満なわけではなかったが、幹部のみんなが冷やかすようなこともなく、本当に自分で良かったのかと考えるのともある




「でも、あの土方はんやろ?
あの人は島原の遊女からかなり人気があるんよ
真面目やし、見た目も素敵でほっとかれるわけない

そんな人にそばに置いたままにしてもらっとるんなら十分想ってると思う

もちろんうちは、芹沢はん一筋やけどね」





なんというか………健気




お梅といろんなことを話していてそう感じていた




この時代だからなのだろうか




お互い、いつ死んでもおかしくない




だから想われることより、想うことを大事にしている




華蓮はちょっとでも欲張ろうとした自分を恥じた






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