神風の如く

初めての潜入捜査





文久三年十二月




京の町もすっかり冷えて本格的な冬がやってきていた




──寒い




当たり前だが、暖房もストーブもないこの時代



夏も体に堪えたが、冬も華蓮にとってはなかなか厳しいものだった



「れーんさんっ!」



暇を持て余していると沖田は必ずやってくるようになった



それは坂本と繋がりがありそうな華蓮を監視するためか否か…………



相変わらず真意はわからない




「おはようございます、沖田さん

あの、お願いがあるんですけど」



今日、華蓮や沖田が所属する一番隊は巡察も仕事もない



「なんですか?」



「芹沢さんとお梅さんのお墓に連れて行って下さい」





何を言い出すかと思えばそんなこと、沖田はふっと笑みを零す



「やっと言い出しましたね

あれだけ泣き喚いておいて、お墓参りも行かないなんて薄情だと思っていたんですよ」



──本当にハッキリ言うなぁ…



「これでも受け入れるのに時間がかかってたんですっ

私、まだまだそんなできた人間じゃありませんから」



あの一件以来、沖田はさらに意地悪くなったように感じていた



しかし、華蓮は一番隊の隊士で沖田はその組長だ



逆らうことなどできない



「ふふっ、すみません
少しからかいすぎてしまいました

朝餉を食べたら行きましょうか
きっとお二人とも喜びますよ」




華蓮は沖田と共に広間に向かった












「それでは、行ってきますね」



華蓮は土方の許可をもらい墓参りに行こうとしていた



「もう、大丈夫なのか?」



3ヶ月前、あれほど我を失ったようになっていた華蓮だ



土方が心配するのも当然で……



「はい、ちゃんとお話してきます」








華蓮を見送り土方は筆をとる



──ようやく、墓参りか



3ヶ月………かなり時間がかかったように思う



坂本と話して、一度はけりを付けたよみたいだったが、失った悲しみはなかなか癒えていないようだった



──苦しむのはいつもお前ばかりだな



土方はまた一つため息をついた





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