幕末オオカミ 第三部 夢想散華編

限界



そうして十日ほどの警護が終わったあと、新撰組は甲州への出陣を命じられ、そのための手当てが支給された。


「甲府城の幕臣と合流し、そこを拠点として新政府軍との戦に勝てば、徳川再建も夢ではない!気合を入れてのぞむぞ!」


慶喜公が恭順の意志を変えなかったことにがっかりしていた局長は、旧幕府から軍資金と若年寄格という位をいただき、少し元気を取り戻していた。


若年寄格といえば大名並で、農民出身の局長にすれば、異例の大出世。

ちなみに土方副長は寄合席格で、旗本並の位になった。


「実権のない幕府の位になんの価値があるのかね」

「上様が謹慎してるのに、俺たちがいて戦になって大暴れでもしたら邪魔なんだろ。
体よく江戸から追い出したいだけじゃないのか」


永倉先生と原田先生が、局長のいないところでぶつぶつ言っているのが聞こえる。


「もう、そんなことばっかり言っていたってしょうがないじゃないですか!」


中山道を進んできているという新政府軍より先に甲府城に入れば味方の有利になることには違いないんだし、出陣命令が出た以上、がんばるしかないじゃん。



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