幕末オオカミ 第三部 夢想散華編
第二章

別れの覚悟



敗走した甲陽鎮撫隊は、浅草今戸の慶養寺に寄り集まった。

いや、もう散り散りになってしまったのだから、元のように新撰組と呼ぶのがいいのかもしれない。


総司とあたしも、もののけの森に帰らずにみんなと一緒にいた。


あまり長距離の移動を繰り返さない方がいいだろうというのが表向きの理由だったけど、総司は先の行軍で局長を支えられなかったことを悔やんでいるみたい。


「ちょっと、近藤先生のところに行ってくる」


「そっか……あたしもお茶を淹れて行こうか?」


「ああ。お前がいると、空気がなごむからな」


隊士たちが寝静まった頃、あたしたちは隠れて局長のいる部屋へ向かった。


お盆にお茶を載せていくと、襖の向こうから話し声が聞こえてくる。


原田先生と、永倉先生みたいだ。


「こんな夜中に、どうしたんだろう……」

「しっ」


総司は唇の前に親指を立て、あたしを黙らせた。

不思議に思いながら、そっと耳をすます。

盗み聞きなんてしていいのかな……。


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