コワレモノ―人類最後の革命―
美貌を壊す
希実が転校してから、約一週間後。

クラスの雰囲気は相変わらずだった。やっぱりそういうものなのか。

「さてと…」

家に帰り、パソコンを立ち上げる。何をするかって? それはもちろん、「夢壊し」の依頼が来ていないかどうかだ。

「お、来てる来てる」

このサイトにはコメント数も表示されるのだが、そのコメント数がかなり増えていた。

「コワレモノさん。今日は、夢壊しをしてもらいたくてここに来ました。三年二組の百瀬美麗(モモセ・ミレイ)という女子なんですが、私は彼女に、私の彼氏を取られてしまいました。コワレモノさん、お願いします。私の彼氏を、取り返して下さい」

百瀬美麗…それは、ミス園浦を三年連続で獲得している、高校一の美女。男子からの人気はもちろん、最近は読者モデルを始めたとかで女子、そして先生からも一目置かれている。ただ、その美貌から、男をたぶらかしているという噂が立っている。それが事実だったとは。

そして何より…彼女もまた、希実と同じく、あの日私と一緒に帰っていた人物の一人。夢壊しはしておかないと。

「その依頼、お受けいたします」

私は、少しばかり慣れてきたキーを叩き、コメントを画面に貼り付けた。

翌日。

私は、彼女の到着を教室で待っていた。実を言うと、あまり話したことがない。呼び方も「百瀬さん」だし。まあ、それは他の女子も同じことだ。近寄りがたい雰囲気は、前から感じていた。

百瀬さんが到着したのは、ホームルームが始まる五分ほど前だった。

一本一本、毛先までつやのある黒髪に、整った眼鼻立ち。どこで売っているのだろうか、何とも言えない香水のにおいがする。男子をもてあそべるわけだ。
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