アロマティック

波乱

 まさか。
 まさか、春子さんが犬だったなんて。

 当たり前のように、春子さんを「人」だと思い込んでいたみのりは、衝撃を受けた。
 聞いた話しだけで、失恋したという相手を「人」だと判断してはいけないのだろうか?
 与えられた話しの断片を繋ぎ合わせて、失恋したばかりの彼女が、春子さんだと勘違いしてしまった自分にも、悪いところはあったかもしれない。
 でもまさか、その相手が犬のことだったとは。
 みのりは相手の正体に驚き、自分に起きている心の変化にも驚いていた。
 永遠の女性関係なんてわたしには関係ないことなのに、どうしてあそこまで頑固に答えを追求してしまったのだろう?
 少し前まで、男性の存在を受け入れることすら我慢できかった。永遠は男性に抱くマイナスなイメージを払拭してくれた。ときに、強引に、ときに、感心や尊敬という形で。永遠がわたしを変えてくれた。
 そんな永遠の、失恋、春子さんというワードがずっと心の片隅から離れなくて、気づいたら真実を知りたいという気持ちが止まらなかった。
 どうしてそんなに気になるのか。
 答えは見つからないけど、もっと永遠を知ってみたいという気持ちが芽生えている。

 音楽番組の司会という大役も完璧にこなした永遠。もちろん、番組は大成功に終わった。冷静な司会ぶりが大きく取り上げられ、またまた世間の評価をあげたみたい。
 翌日1日お休みが入り、休み明け1発目の仕事は雑誌の撮影。
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