I grumble to Christmas
I grumble to Christmas


はっ。
何がクリスマスよっ。

クリスマスってのはね、クリスチャンの行事なのよ。
キリスト教でもない日本人が、浮かれてケーキ食べてワイン飲んで、はしゃいでるんじゃないわよ。

恋人とイブにラブラブなんて、悔しいくらいに羨ましいじゃないのさっ。

どうせ、私は一ヶ月前にふられましたよ。
クリスマスで無駄なお金を使う前に別れられてラッキーなくらいだわ。

なんて言いながら、さっきから書類作成のために叩いているキーボードが壊れそうな勢いだけれど、何か?


本日二十四日のイブは、平日だ。
いくら彼氏がいなくてデートの予定がないとしても、こんな日に残業なんてする気はない。

が、しかし。
現在、太陽が真上にある昼時。

こんな真昼間に、社内のフロアに居る女子社員が、私と、もういくつになるのか訊いてはいけない経理事務の佐々木さんだけってどういうことよ。

女子社員がランチタイムで出払っている。
なんていうことではない。

本日出社した女子社員が、佐々木さんと私だけなのだ。

何を言いたいかって?

我が社の緩い体質のせいで、女子社員はこのイブに迷うことなく有休を取っているという、なんとも悔しい状況なのよ。

ていうか、休むなら休むって、誰か一言くらい言ってくれたらいいのに。

それとも、なに。
彼氏と別れた私に気を使ったの?

だとしたら、余計なお世話よ。
みんなが休むのに、私だけ出社なんて。
彼氏が居ません、と言ってるようなものじゃない。

現にさっきだって、部長に言われたのよ。

「奥井さんも、今日くらい休めばいいのに」って。

頬が引きつって、しかたなかったくらいよ。
なんなら、言われた瞬間無言で席を立って帰ろうかと思ったくらい。

けど、そんな大人気ない事したら、男がいないからこんな可愛げのない態度。
なんて思われちゃうのもしゃくじゃない。

引きつる頬を精一杯宥め、満面の笑みで部長に言ってやったわ。

「予定は、夜からですので」

予定なんて、無いけどねっ!

とにかく私は、胸に抱えるやり切れなさを、目の前にあるキーボードを強打することで紛らわし続けた。


< 1 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop