ふわふわ。

カタカタキーボードを打ちながら頷いていたら、田中さんに脇腹をつつかれた。


「ちょ……っ。やめっ」

「ちょっと、山根さん。倉坂さんとどうなのよ」

「どう……って、どうもしないけれど」

「色々噂があるじゃない」

「噂は噂よ」

「だって、立候補されてるんでしょ?」


……うーん。


どちらかって言うと。


「ちょっかい出されてる感じかな」


何だか最近はそんな感じ。

残業中でも、そうでなくても。

あの無表情は相変わらずで。

たまに通りすがりみたいに、さっきみたいな変な事を言って去っていく。


何がなんだか、うん。


やっぱり変な人だ。


「はぁ~。まぁ、私は好みじゃないけど、面倒くさい感じの男よね」

「あ。そう思う?」

「これ見たらねぇ……」


田中さんの手にあるのは、さっき渡されたばかりの書類。

事細か~に指示のついた書類。


「頑張ってね」

「あまり頑張りたくないわぁ」


こぼしながら、打ち込みを始めた。

昼間のフロアは、いつもこんな感じ。

たまにくしゃみをする人が増えたかもしれないなぁ。

やっぱり、乾燥してるのよ。

乾燥するし喉はイガイガするし、風邪も流行りだす。

予防にマスクしておこうかな。

蔓延しだしたら大変だし、何せ営業の皆さまコンコンいい始めたし。


皆が皆、風邪引いたら大変……


って、思っていたら。

背後で物凄い音がした。

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