波音の回廊
Illusion
 「月の綺麗な夜に、島の残像が海に浮かび上がって見えた」


 みつ子さんのその言葉が耳に残り、私は何かに導かれるように夜、ログハウスを抜け出し。


 一人浜辺に立ち尽くしていた。


 目の前には夜の海。


 満月が高度を上げつつあった。


 程なく南中時刻を迎える。


 月明かりは海を照らし、まるで金色の一本道のように輝いている。


 みつ子さんの曾祖母、ひいおばあさんが若い頃に、月明かりに照らされた島の残像を目撃したという。


 驚いて家族友人にそれを話したのだけど、誰も信じてくれなかったとか。


 みつ子さんが子供の頃、まだひいおばあさんは生きていて。


 海に沈んだ島を綺麗な月の夜に見かけた話を、繰り返し幼いみつ子さんに聞かせてくれたという。


 それがきっかけで、みつ子さんは伝説の島に興味を持つようになり、本日に至る。
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