波音の回廊
Comet
 「あら清廉、こんな夕暮れまでご苦労様」


 島内の視察を終えて水城家の邸宅に戻ったのは、辺りが暗くなり始める頃だった。


 馬小屋に白竜を戻し、二人で清廉の館へと向かっていた時。


 七重……すなわち清廉の継母と遭遇した。


 「これから夕食よ」


 「……自分の館で取ります」


 「また館にこもるのね」


 清廉は七重の誘いを無視して、歩き出し始めた。


 「またその娘を連れ歩いているのね」


 「それが何か?」


 「得体の知れない者をうかつに側に置いていけないって、昨夜お父上も申していたでしょう?」


 「では七重が私にあてがった女が、この瑠璃以上の意味を持つとでも?」
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