Sweet Lover
私はぎゅっと瞳を閉じた。

どうせ、高校を卒業したらあの家は出なきゃいけないと思っていた。

いくらなんでも、大学進学費まで、義理の両親に出してもらうのは心苦しい。


だから、これはチャンスなのかもしれない。

「須藤さんの家に、置いてもらえますか?」

「おや、マーサちゃんってば、他人行儀なんだから。
 逢えなかった10年分を取り戻すようにいっぱい愛してあげるよ」

……語尾に、年不相応なハートマークが山のように見える気がしたんだけど……。

きっと、きのせいよね?


いくらなんでも、分別あるオトナだし、パパとママの友達だって言うし……。


私は、幼い自分が「好きだった」という、見た目だけはパーフェクトなこの男を信じてみることに、決めた。
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