Sweet Lover
ただ、真朝にとってこれが必ずしもベストでないということは、分かっていた。

必死に封印してきた幼い記憶が、俺のせいで開封されてしまうかもしれない。

それが、最初に溢れ出すならきっと、夢の中だろう、と。

素人ながらに考えていた。


静かに眠っている真朝を腕の中で抱きしめる。


傷つけたかったわけじゃないのに、結果的に傷つけることしか出来ない――。
そんな俺に彼女は再び「好き」と言ってくれるのだろうか――。


許可も得ず、本人の意識もないままに、勝手に重ねた唇は、幼い頃とはまた違う柔らかさ甘さがあった。
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