Sweet Lover
「じゃあいいよ。
 俺が風邪引いたら、看病してね」

響哉さんはそう言うと、タオルケットの上から私を抱き寄せる。




途端、私の頭の中にフラッシュバックが起きた。

*****

『キョー兄ちゃんが熱いっ』

いつも、逢うとすぐに抱きつくので、その異変に気づいたのはまだ小さな私。

『あら、鬼の霍乱かしら』

声を上げたのは、ママ。

『そういえば顔色悪くない?』

これは、パパ。
そういえば、なんて。
何を呑気なことを。

……でも、そういう人だもの。そう、私の両親はおっとりしたマイペースな人たちだった。

『ねぇ、キョー兄ちゃん、大丈夫?』

見上げた私をなんてことない笑顔で抱き上げてくれたのは、……今よりずっと若い、響哉さん……?

*****


「マーサ?」

我に返ると心配そうな顔で、響哉さんが私を見ていた。
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