『本当に今日来ないの?』


閑散としたオフィスに鳴り響いた電話を取れば、名前も名乗らずに先方は突然そんな質問を投げかけてきた。


「山内さん……もう酔っ払ってるんですか?」


そんな事はないと抗議をしてはいるがいつもよりもハイテンションな彼女の声にクスリと笑みが漏れる。

それから、電話越しの彼女の姿を思い浮かべようとした。
いつも美しい山内さんは今日はより一層綺麗なんだろう。


並ばずに済んで良かったという気持ちよりも、美しい人が着飾った姿を見られなかったのは純粋に残念だという気持ちの方が大きい。
女は男以上に綺麗なものを愛でたい生き物なんだから。

それに、元より彼女の足下にも及ばないのは心得ている。


「今日は以前から大事な打合せの予定が入っていたんですよ……」

「支店長悲しむよ~川井さんが来ないなんて」


聞き慣れた人達の声が混ざるざわめきをバックにした山内さんの言葉に、私の笑顔が乾いた物に変わったのが自分でも分かった。

電話で、良かった……

今日は上手く笑えそうにも無い。


「……言ってあるから。大丈夫ですよ」


行ける、訳がない。

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