ゼリーフィッシュ
恋心
現実の世界に生きながら、頭の中では、夢の世界を考えている…現実の生々しさを目の当たりにしたくなくて、『私だけは、違う…』と、現実逃避…きっと私だけじゃない…みんな、他の世界に住む、別の自分を創造しては、どこか安心している…。本当の私は、今の私では、ないと…。
携帯のアラームが鳴って目を覚ます。朝から、幸せな気持ちでいっぱい。
あの人が夢に出てきた。大好きなあの人の夢を見た。布団の中で余韻に浸る。もう少し続きが見たかったなぁ…そしたらキスの一つでも出来たかもしれないのになぁ…
あ~ぁ…起きたくねぇなぁ~。夢の中だけで生きていきたいよ。目なんか覚めなくて良いからさ…。そしたら、あの人とも、いつでも会える。
あ~ぁ…こりゃヤバいわ…さっさと飯食って、トイレ行って、服着て、顔造って仕度せにゃ、仕事に間に合わん。
さっ!現実のスタートだ。
私は、重たそうに布団を蹴りあげ、まるでベットから転がり落ちるように、起き上がる。一人暮らしには、少し広い1LDK。まぁ、田舎だから、少々、広くても家賃は、お手頃。そんなことは、どうでも良くて、私は、キッチンに行き、トーストを焼く。そうしている間も、実は、さっきまで見ていた夢を思う。 現実の生活の中で思い浮かべる事は、ただ一つ、あの人の事だけ。
高校の授業で出てきた夢物語を思い出す…あれは、確か、徒然草だっただろうか…?!
愛する人の夢を見た時は、自分がその人の事を思っていた為では、なく、その人が夢を使って自分に会いに来てくれたのだと…
なんて、素敵なのだろう…まぁ、見方によれば、都合の良いだけの受取り方かも知れない…だけど、この解釈の仕方は、素晴らしい!恋する乙女心に見事にクリーンヒット!! あの人が私の事を知らなくても、無意識の内に夢を使って会いに来てくれた…いつか会うであろう私に…。
そして、彼もまた、たった今思っているに違いない。今日、夢に出てきた私の事を…そして、なんの根拠もなく思うのだろう…私に会わなくては…と。
こんな事を私は、毎日考えている。仕事ヘ向かう車の中で、あの人の声を聞きながら…会った事もない、彼の事を…。私の存在すら知らないあの人の事を…。
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