追憶のエデン
Episode4
馬の蹄と車輪の音が、静まり返った森の中を響かせていく。



「あらぁ、どうしたの?


……いつもの気紛れではなくて?


――そう…


ご苦労様。



…ック…不愉快極まりないわッ……」


静まり返った森の中、

馬の蹄と車輪の音

重なり聞こえた声は、何の音…?
















「んっ…はぁっ、未羽っ…んんっ」


「やぁっ!…んっ…」


両手の指を絡め、ベッドに深く縫い留められ、スプリンクが軋む。


「駄目…はっ…足りない。んっ……」



――ガリッ


「……ッ!」


「いい加減にして!」



――醒めない夢もある。


あたしが与えられていたと思っていたのは、実際本当にルキフェルの自室だった。
せめて違う部屋を、とお願いしたけどその要望は通らず、今もこの部屋でルキフェルと生活する羽目になった。


隣で眠るルキフェルを確認し、逃げ様とした事もある。



「まだ逃げ様なんて考えてるんだね」



そして失敗する度に、ルキフェルを煽る事になる。


噛み付く様に深く深く――。



「―ック……逃げようだなんて思ってません…!」


――重ねる嘘。
強く握った掌に爪が喰い込んでるのが何よりの証拠。


それが見透かされてるのも分かってる。
ルキフェルの嘲笑うかの様な笑顔の中に、感情を映さない瞳が何よりの証拠。



「ふーん。……じゃぁ、今日はデートでもしよっか。イヴは今でも十分魅力的だけど…僕の為に着飾って、もっと可愛くなって、2人で手を繋いで、定番だけど普通の恋人同士のデートをね。そして人目を憚らず愛を囁いて……確認し合うんだ。

どう?素敵じゃない?それに――



逃げるのも諦めたんでしょ?」




いつもの甘い声の中に、冷たいトーンが突き刺さる。


これはきっとあたしに対する牽制だ――。

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