“結婚しないか?”

久し振りのデートで連れていかれたのは、プロポーズにはさぞやおあつらえ向きであろう夜景の見える素敵なレストランだった。

私が食後に出されたデザートをフォークで突いている最中に、彼はおもむろにポケットから指輪を取り出し、真っ白なテーブルクロスの上に置いた。

テーブルを彩るように飾られていたキャンドルの炎が、一世一代の大勝負に出た彼の表情を映し出す。

海外転勤が決まったと知らされたのは、プロポーズとほぼ同時のことである。

“一緒に来て欲しい”

ひとりで異国へ旅立つのは心細いからと、彼は冗談めかして己の意気地のなさを笑っていたが、突然のプロポーズにうろたえたのは、むしろ私の方だった。

交際5年目。

大学生の頃からの付き合っていた彼とは、それなりに上手くやって来ていたと思っていた。

同じ教授の授業を取っていたことが縁で知り合い、なんとなく一緒にいることが当たり前になって、いつしか互いを恋人と呼ぶようになっていた。

走ることに夢中だった私にとって、男性と付き合う自体初めてのことであった。

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運命    年下 

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