今宵も、月と踊る


ドクンと、心臓が脈を打つ。

その時、全ての音をかき消すように一際強く風が吹いた。

キーンとひどい耳鳴りがして、頭を押さえる。鈴の音だけが大きく響いて頭が割れそうだ。

おかしなことに神楽殿で舞っている彼が、声をたてて笑っているような気がした。




「おいで。俺の“カグヤ”」




地面がぐらぐらと揺れているような錯覚に陥るほどひどい眩暈がした。

(“カグヤ”って……誰のこと……?)

瞼を閉じた途端に、暗闇に攫われる。

呼び水は彼の声。

“カグヤ”

……まるで、穏やかで小さな私の世界に、終わりがやって来たようだった。

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