潔癖な部分があることは、自覚していた。


 電車の吊革もエレベーターのボタンも、得体の知れない他人の皮脂でべたべたとした感じが不快で、とてもじゃないけど素手では触れない。


 恋愛だってそう。


 手垢にまみれていない清潔なストーリーを、誰よりも求めていた。


 生まれて初めての男女交際が始まった人と、婚前交渉もなく、そのまま結婚までいく。


 ずっとそんな風に思い描いていたのに、自分なら踏み外さないと信じていたのに――一夜限りの誘惑が、一瞬で全てに終わりを告げた。


 相手は見てくれだけがいいだけの、行きずりの男だった。


 男は言った。「優しくするよ」「怖がらないで」


 初夜まで純潔を守ると頑なに決めていた私でも、そういう行為に全く興味がない訳ではなかった。


 私は一時の性への好奇心に、その男に身を委ね――。


 どんなに嘆いても、女の一番大事なものは返っては来ない。


 もう二度と、永久に……。

この作品のキーワード
推理  初恋  ミステリー  ルームシェア  アルバイト  年齢差  大学生  大人の恋  フリーター  共同生活 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。