コンビニバイトが楽って言った奴、誰よ。


「だーかーら、煙草くれって言ってんだろ!」


 よれよれのジャージを着た親父の怒鳴り声が、狭い店内に響き渡る。


「煙草と言われましても……銘柄が番号を言ってもらわないと、こっちも分からないですよ」


 私はキレたい気持ちを抑えつつ、低姿勢に対応する。


「もういい! 最近の若い者は、本当に使えんな!」


 親父は苦虫を噛み潰したような顔をしながら、店内を出て行った。


 出た。無能な年寄りほど、〈最近の若い者は〉って、口癖みたいに言うんだ。


 そんなあなたも、若い頃はそう言われて生きてきたんじゃないんですかね――。


 私は込み上げてくる悔しさで、目頭が熱くなる。


 大学を卒業しても定職に就けなかった私には、途方もないほど惨めな人生が待っていた。


 定職に就くまでの繋ぎとして始めたコンビニでのアルバイトは、毎日が知性と品位の欠片もない客との付き合いだった。


 時給七百円、月収七万円の生活。


 どれだけ真面目に働いても、給料と世間の評価は上がらない。


 そればかりか、コンビニバイトというだけで下に見られる始末だ。


しかし人間とは案外楽観的に出来てるもので、このすさんだ日々から抜け出してくれるような出来事を、奇跡を、私は当てもなく待ち望んでいる――。

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