今朝も私の方が先に起きてしまった。


 数十センチの距離で摩央の目を瞑った顔を見ただけで、体の真ん中辺りがどんどんと熱くなっている。


 ピカソだとかゴッホだとか、私は芸術的なことはよく分からない。


 ただどこか、一枚の絵画に心を奪われている気分だった。


 異性を好きになるのって、こんな風に寝顔を愛せるかどうかなのかな。


 ……なんて、何を気の迷ったことを思ってしまっているんだろう。


 ただの母性本能を、恋愛と勘違いしている。


 冷静に考えてみれば、摩央の顔も性格も好みではないのにさ。


 私は摩央の頬に、そっと手を添えた。


 無意識の本能からだった。


「……うわっ」


 摩央の目が、ぱっと開く。


「何!?」


 眠気眼でこっちを見ている。


「あ、前髪が目にかかりそうだったから――」


「あ、そう――」


 摩央がもう一度、何の躊躇もなく瞼を閉じる。


 こんな造形の整った息子がいて、親御さんはさぞ誇らしいんだろうな――。

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