洗面所での歯磨きから戻ってきた摩央に、私は話し掛けた。


「……あなた、本当に〈胡桃沢摩央〉なの?」


「何、その哲学的な質問は?」


 摩央は半笑いを浮かべている。


「――見て。これは私の、免許証。これが偽装されたものでないと信用するのなら、私は正真正銘、〈織原理和子〉ということになる」


 私はテーブルに、自分の運転免許証を置いた。


 摩央はそれを手にし、私の顔と交互に見つめる。


 私は目の前にいる少年が何者なのか、正確に知りたい。


 そして私をただ期間限定のバイト仲間ではなく、一人の信頼の置ける人間として見て欲しい。

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