『カンパーイ!!』

チェーン店の居酒屋で若者たちが、グラスを一斉にぶつけあう。

こ、これが、所謂サークルってヤツなのね。

私、小森遥(19)はカシスオレンジのグラスをギュっと握りしめて感慨に耽っていた。

「遥、楽しんでる?」隣に座る同じクラスの友人である岡崎瑞希が声を掛けて来た。

「うん、感動してる」

随分場違いな感想だが、瑞希は砂糖菓子のような甘い笑みを浮かべる。

「憧れの中谷先輩と同じサークルに入る事が出来たんだもんね」冷やかしながら私の肩を小突いた。

「うん…」私は頬をポッと赤く染めてカシスオレンジを一口飲む。

隣のテーブルに友人達と座る中谷先輩に視線を向けるとニンマリと頬が緩んでくる。

同じ大学に入れたなんて夢みたいだ。


中谷先輩は同じ高校に通う2学年上の先輩だった。

当時テニス部の部長だった中谷先輩は、背が高く、甘いマスクをしており、学校中のアイドルだった。

高校一年生の入学式の時に、生徒代表の挨拶をしたその凛々しい姿を見て、私は一目見て恋に落ちてしまった。

運動がからきし苦手だったが、中谷先輩に少しでもお近づきになりたくてテニス部へ入部した。

私のような地味な女は告白するような勇気なんて勿論なくて、球拾いをしながらテニスコートで華麗にプレイする中谷先輩を遠くから眺めているだけで満足だった。

しかし、消極的な割には粘着気質な私は、中谷先輩が東栄大学へ入学することが決まったと聞いて、同じ大学へ入る事を決意したのだ。

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