【儀式のはじまり】



当日、朝早く起きたあたしは、事前に宮司さんたちから指示された通り、お清めのためのお塩を溶かしたお風呂に入り、かなり念入りに体の隅々まで洗った。


それから間もなく家に訪ねてきた響ちゃんと、お母さんに神社から借りた婚礼用の華やかな打掛を着付けてもらい、髪を結ってもらった。


支度が終わった頃になると、今度は神社から和装のような独特な衣装に身を包んだ男のひとたちが、肩に輿(こし)を担いでやってきた。


輿っていうのは、お祭りで見るお神輿(みこし)によく似た乗り物だ。

海来神社の神紋(神社ごとにあるオリジナルのマークのようなもの)が描かれたそれは、人ひとりが座れるくらいの大きさの台座に、立派な屋根がついていた。


これは婚礼用のお輿で、あたしはまずこれに乗って、海来神社まで行くらしい。

それがもうすでに、『入輿の儀』という『神婚』の儀式のひとつになるのだと響ちゃんがおしえてくれた。




慣れない着物姿でふらつくあたしが響ちゃんに先導してもらいながら輿の台座に座ると、輿を担ぐ『力車』さんたちがお輿を担ぎ上げた。

この『力車役』をつとめているのは、普段は漁師をしているというこの村の体格のいいおじさんやお兄さんたちで、輿の上は思った以上に高く感じられて怖かった。

しかも力者さんたちの足が一歩進むごとに、当然台座も揺れる。


落ちそうにならないか怖くなってどこかにしがみ付きたいのに、介添えの響ちゃんに「手は膝の上に。もうすこし背筋を伸ばしてお座りください」と注意されてしまう。


でも真っ白なおろしたての足袋に包まれた足で踏ん張りながら、どうにか台座の上でバランスを取るのが精いっぱいで、あたしは姿勢のうつくしさまで気にしていられなかった。


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