(3)嫁入り当日の夜



「本日はお疲れ様でございました」


披露宴会場である客間を抜け出すと、ユウキさんが一度立ち止まって深々と頭を下げてきた。



この『お邸』は建て増しを繰り返したお家なのか、端が見えないほど長い長い廊下は左右にいくつもに枝分かれしていて、すぐに間取りを覚えられないほど複雑な造りになっていた。

思いもよらない場所に取り付けられた階段や渡り廊下、突然現れる袋小路や小部屋の入り口などが入り組んで、まるで迷路みたいだ。


天井から吊るされたアンティーク調のランプはおしゃれだけど、廊下にぽつりぽつりと不規則にしか取り付けられていないうえに、灯りが妙に弱々しい。

きれいな木目の天井も、床に敷かれた赤絨毯も、クラシカルで豪華だけど、薄暗い中で見るとその古めかしさがなんとも不気味だ。そして目の前にいるユウキさんもなんだか怖かった。

目は真顔のままなのに、口の端だけをにんまりと吊りあげて微笑んでいた。



「さてこれより『和合の儀』の準備をはじめましょう。……ああ、もうお声を出していただいて結構ですよ。あの部屋から出てしまえば、皆々様の耳にはもう花嫁御料の声は決して届かぬゆえ」


そう言われたけれど、まだいくらも宴会場から離れていないこの場所で声を出すのはためらわれて、返事の代わりにあたしは頷くと、ユウキさんは意外そうに眉を跳ね上げた。


「……まあまあ意外に用心深い。……それにしてもこの虫みたいなチラチラと鬱陶しいのはなんだろうねぇ。目障りな……」


ユウキさんはなぜかすこし煩わしそうにあたしの方を見て眉を顰める。


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